映画「感染列島」リアルな医療崩壊の描写から過剰演出メロドラマへ変異!

邦画

前回に引き続き、ウイルスの脅威を描いた映画をご紹介します。

今回は、2009年正月に公開。
未知のウイルスの脅威が日本列島を襲うスペクタクル巨編、「感染列島」です。

あまりネタバレしてないつもりですが、若干内容に触れてる箇所もありますので、未見の方はご注意ください。

主役は、どんな役でもこなす名プレーヤーの妻夫木聡さん
優秀かつ誠実な青年医師:松岡を演じています。

ヒロインは、凛とした演技が光る、WHO(世界保健機構)のオフィサー:小林栄子役の壇れいさん

スポンサーリンク

ウイルスの特徴

悲劇は、とある地方都市の総合病院を舞台に、日本国内における感染第一号者が風邪の症状で病院を訪れ、松岡の診断を受けるところから始まります。

ウイルスの感染は、瞬く間に広がっていき、舞台の病院は、たちまち院内感染と言う最悪の状態となっていきます。

映画における、ウイルスの特徴は、こんな感じです・・・。

  • 発作がおきてから重篤になるまでの期間が非常に短い。
  • 致死率が50%以上と、恐ろしい殺傷力を持っている。
  • 発作時の病状がエボラ並みで非常に恐ろしい。

・・・結構、恐いウイルスです。

WHOの存在

当初、なかなかウイルスの正体が判明できず、鳥インフルエンザから発生した新型インフルエンザではないか・・・と推測した政府は、タミフルの投与を開始します。
しかし、新型インフルではないので当然効果は見られず、院内感染は、益々スピードを上げて拡大していきます。

すぐに、WHOが乗り出します
対策班の責任者として抜擢されたのが、壇れいさん演じる小林です。

それにしても、この映画におけるWHOは、かなり心強い存在として描かれていて、つい「WHOって頼りになるなあ」と思ってしまいます。

映画公開当時の、実際のWHOが、世界的にどのように受け止められていたのかは記憶にありませんが、現状のコロナ対応におけるWHO(テドロス事務局長)の言動や姿勢を見ていると、非常に頼りなく、映画と現実で、その組織の信頼性において、大きなギャップを感じてしまいます。

WHOから院内感染の対策を一任された小林は、病院全体を隔離して、ウイルスの正体を探ろうと奔走します。

医師や看護師にまで感染が広がっていき、次々と被害者が増えていく院内。
病院全体を隔離しようとするWHO側と、一般患者の受け入れを心配する病院側との確執。
患者で溢れ、パニック状態の中で現場は疲弊し、それでも容赦なく指示を出す小林に対し現場が反発。

この映画の最大の見どころは、ウイルス拡大から院内感染までの、病院が崩壊していく様子を描いた部分に集約されているのです。

映画の致命的欠陥

しかし、この映画の悲しいところは、「良いところはこの医療崩壊場面だけ」と言うことです。

もし、この映画が、最後まで医療崩壊の描写を中心にしてカメラを回し続けていたら、ひょっとして世界に通じる素晴らしい作品になっていたかもしれません。

序盤までは、ウイルスの感染状況など、うまく描けているのですが、途中からなぜか、意味のない感情表現や、物語に直接必要のないメロドラマ要素が顔を覗かせはじめます。

そして、そういった不要物と言うのは、まるでウイルスの様に至るところで発生・増殖し、やがて映画事態を崩壊させていくのです。

セリフ説明による弊害

まず、昨今の日本映画によく見る「心情を全てセリフで説明する」と言った、安易な演出が非常に気になります。

もう、いいかげんやめませんか、この手の悪い癖は。ハリウッド映画では、まず見たことがありません。

また、大声で叫ぶ演技もいただけません。これも、日本製の映画やドラマでよく見かけます。
緊迫感を出すには、完全に逆効果です。

医師や看護師たちが、手際よく、ただ淡々と動きまわっている様子を描くだけでいいのです。
なのに、急にその中の一人が、「もう耐えられない!もう限界だー!」などと叫びだす。
人は、あそこまで独り言は言わないし、叫びません。

もはや、助からないであろう患者の呼吸器を外し、重篤な患者に移し替えるシーンがあります。
結果二人とも亡くなってしまうと言う重苦しいシーンです。

現実のコロナ禍においても「呼吸器の不足」は重大な課題となっておりますし、それを彷彿とさせる大切なシーンだと思うのですが、そんな大事な場面で、看護師の一人が、「せっかく呼吸器を外したのに・・・」と、わざわざ声に出して呟いてしまう。

セリフで言わなくても、心電図の停止だけで絶望感は十分に観客に伝わるはず。
いや、セリフが無い方が絶対に伝わるはず。
素人でも分かるのに、それでも喋らせてしまうのは、なぜなんでしょうか。

日本映画は、ほんとに喋らせすぎ。

主人公とヒロインの「雨に濡れたままの会話シーン」も、なぜか日本製ドラマに良く見られます。
ビチョビチョになったまま会話してる・・・普通あり得ないでしょう。
「早く建物に入れよ」と、会話中、ずっと気になって仕方ありません。

「感動してね」と言わんばかりの子役の演技も日本映画の特徴です。
日本の子役って、自然な演技をする子もいるのですが、中には演技力あり過ぎて違和感ありありの子も目につきます。これは演出の責任かもしれませんが。

このように、この映画は、やたらとセリフを介入させ、説明し、感動させようと過剰な演出を繰り返すのです。

杜撰な状況設定

また、この映画のもう一つの問題点は、ウイルスの感染力の恐ろしさを伝えきれていないことです。

確かに、エボラ出血熱並みに、顔の至る箇所から出血する様子は、絵的には恐ろしく描かれていますが、この手の映画で絵で恐がらせるのは簡単です。

それよりも、もっと心理的にこのウイルスが如何に恐ろしいのかを伝える細やかな気配りが必要なのです。

まず、 主人公たちが、マスクやゴーグルをしたりしなかったりと、その有効性が曖昧で気になって仕方がありませんでした。

このウイルスは、どこまでが致命ゾーンで、どこからが安全ゾーンなのか・・・その辺りをハッキリさせていないため、観客は、現状の深刻度がつかめず、主人公たちが移動する度に、「この場所は、マスクしなくてもいいのか?」と心配ばかりが先に立ち、とても感情移入どころではなくなってしまうのです。

また、命が危うい少女を横にして、今まさに最善の治療に専念しなければならない場面で、主人公とヒロインがパソコンの画面でやり取りを交わすシーンも違和感があります。

ここは、解決に導くためのキーワードが伝えられるという、重要でかつ1秒を争うシーンなのに、「パソコンの画面見つめて昔話」・・・もはや言葉を失うしかありませんでした。

とにかく、医療映画として成立させるためには、もっと丁寧に状況を伝え、緻密な会話を交わし、医療的に納得のいく展開に仕上げていく必要があるのに、この映画は、それが出来ていないのです。

ムードのない謎の島

その後、ウイルスの発生源である「架空の島」を突き止め、主人公たちが調査に行くのですが、この島の描写が、これまたいただけませんでした。

島は、日本映画が東南アジアの秘境を撮るときによく使う、よく見かけるレンタルスポットで、しかも、現地人の言葉は英語だし、使っている役者さんたちはフィリピンのレンタル俳優さんだって分かっちゃうし・・・これでは、「秘境」とか「神秘の島」といったムードが全然伝わってこないのです。

日本製エンタメ映画への懸念

それにしても、この映画に限らず、昨今の日本製エンタメ映画が、ここまで観客をバカにした作品ばかりになってしまうのは、なにが原因なのでしょうか。

脚本のせいなのでしょうか、それとも監督の演出力なのでしょうか、役者の演技力なのでしょうか・・・いや、これは、その全てに「OK」を出した製作者の責任であり、こういった映画を望み、ヒットさせてしまう私たち観客の責任なのです。

これからは、観客である私たちが、もっと厳しい目線で評価していかないと、日本製エンターテイメント映画の将来は危ういと改めて感じます。

確かに、前回投稿した「復活の日」も、前半の医療崩壊までは見ごたえがあって、後半の核ミサイル阻止のシーンに入っていくと、その荒唐無稽さに着いていけなくなる・・・と言う映画でした。

「前半よくて後半イマイチ」なのは、この映画と変わらないのですが、ただ、「復活の日」の場合は、はじめから「特撮SF映画」っと言う位置づけで作られているし、そういったものだと観客も分かって観ていますので、後半の荒唐無稽さも許されるのです。

しかし、この「感染列島」は、特撮SFと言うほどCGや特撮に拘っているわけではなく、医療パニック映画としても中途半端で、演出面は粗だらけ・・・一体なにがやりたかったのかが全く伝わってこない作品になってしまっているのです。

いま、我々に試されていること

現実のコロナ禍は、この映画の様な絵空事の解決とはいかないようです。

現時点(2020年4月16日現在)での日本国内における感染者数は、8,582人。死亡者数は136人となっています。
世界的には、感染者数2,063,161人。死亡者数136,938人に上っています。

テレビでは、日本医師会からの「医療崩壊ギリギリである」との悲痛な叫びが流れています。
影響は、医療現場だけに留まらず、社会活動も完全にストップしています。
国の支援如何によっては、今後経済による犠牲者が続出する恐れすらあるのです。

一向に終息の目途が立たない状況の中、我々は、どの様に行動していったらよいのでしょうか。

いままさに、我々の「人間力」が試されているときだと痛切に思う次第です。

【感染列島】日文版預告片1
Amazon | 感染列島 [Blu-ray] | 映画
妻夫木聡, 檀れい, 国仲涼子, 田中裕二, 池脇千鶴, カンニング竹山, 佐藤浩市, 藤竜也, 瀬々敬久 邦画・洋画のDVD・Blu-rayはアマゾンで予約・購入。お急ぎ便ご利用で発売日前日に商品を受け取り可能。通常配送無料(一部除く)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました