映画「劇場版 若おかみは小学生!」【感想】何もかもハイクオリティ!なぜ大人が感動するのかを考える![若干ネタバレ]

邦画

本日、地上波にて初放送されるのを記念して、取り上げてみました。

大傑作との評判が高いこの映画ですが、なかなか語るのが難しい作品であることも確かです。

強いてひとことで言えば、「作画と脚本のクオリティが桁外れにすぐれた子ども向け道徳映画」と言ったところでしょうか。

春の屋さんも今は大変な時期でしょうが、おっこのパワーで乗り越えてくれるでしょう!

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映画の概要

公開:2018年9月

  • スタッフ
    • 原作:令丈ヒロ子・亜沙美(絵)『若おかみは小学生!』シリーズ(講談社青い鳥文庫)
    • 監督 / 絵コンテ / 演出:高坂希太郎
    • 脚本:吉田玲子
    • 音楽:鈴木慶一
  • キャスト
    • 小林星蘭
    • 松田颯水
    • 水樹奈々
    • 薬丸裕英
    • 鈴木杏樹
    • ホラン千秋
    • 山寺宏一
    • 一龍齋春水
    • 一龍齋貞友

あらすじ

とにかく体感してなんぼの作品なので、「あらすじ」ってあまり意味がない気がするんですけど、サラっとだけ書いておきます。

交通事故で両親を亡くしたおっこは、祖母(峰子)が営む旅館「春の屋」に引き取られ、若女将として暮らすことになります。

もちろん、はじめはうまくいきませんが、それでも仕事を覚えようと頑張るおっこ。

いろんな人生を背負った客たちをもてなす内に、おっこは、若女将と言う仕事の素晴らしさに目覚め、客たちもおっこの献身的なもてなしに心を癒され、日常へと帰っていくのです。

そんなある日、神の悪戯としか思えない、おっこの心をかき乱す客が春の屋を訪れたのでした・・・。

感想

半端ない作画クオリティ

まず、この映画のアニメーションのクオリティの高さに異論を挟む方はいらっしゃらないでしょう。
画を楽しむだけでも価値のある作品だと思います。

映画がはじまった瞬間に、「こいつぁー本格的なのがはじまっちゃったかも」・・・と、冒頭から期待度が爆発すること必至です。

神楽の細やかな振り付けや雅楽の演奏の所作など緻密で丁寧。
旅館「春の屋(はるのや)」の描写も、その楚々とした佇まいと、清々しい空気感が伝わってきて、画を見てるだけで、「ここでのんびりしてえー!」と思わず叫びたくなるほどです。

花の湯温泉を中心とした美しい山々と温泉街の風景も見事。
温泉地のモデルは「有馬温泉」、旅館「春の屋」のモデルは京都の「美山荘」だそうですが、ロケ地巡礼に行きたくなること必至の癒しの光景が描かれています。

硝子や包丁への写り込みの妙、旨そうな料理の表現、畳や襖の質感に至るまで、その拘りの作画を是非ご堪能ください。

キャラクターデザイン

この映画のキャラクターデザインについて、個人的な感想ですが、「ポスターやDVDパッケージの絵柄と映画で感じる絵柄との雰囲気が違うなあ」と感じました。

ポスターやパッケージに描かれているおっこが、やけに幼児性が強調さている様に感じたのです。

これは絵柄と言うよりも、おっこの足元がタイトルで隠れているため、等身が崩れて見える結果なのかもしれません。
少なくとも私は、このデザインを見た瞬間、「これは自分の観る映画じゃないな」っと一瞬で興味を削がれてしまったのは事実です。

結局、評判を聞いて後で遅ればせながら観たわけですが、実際に動いている映画のおっこを見ると、あの幼児っぽい印象よりも格段に洗練されて写っていたし、大人の鑑賞に堪えられるレベルに感じました。
あのポスターデザインから、私のような印象を持ってしまった大人が相当数いたんじゃないかと思うと、勿体ない気がしてなりません。

基本この映画は、のっこをはじめ幽霊たちも含めて、子ども達の造形は原作を踏襲したデザインとしていて、峰子さんや板前さんや中居さんなど大人達の描き方は、高坂希太郎監督の絵コンテが強調された非常にジブリっぽいデザインとなっているように感じます。

ただ、おっこの母親だけが松本零士さん風なのが不思議だったんですが、調べみて、おばあちゃんの峰子さんの声を一龍齋春水さん(且つての宇宙戦艦ヤマトの森雪の声優さん)がやっていることから、その娘さんの造形を森雪にしたんだろうなってことが想像できます。

たぶん当たってます。

子ども向け道徳映画としての位置づけ

この映画は、確実に「子ども向け道徳映画」として作られていると感じます。

ですから、等身大の小学生ではなく、映画を観る子どもたちの理想となる「大人びた小学生」が主人公として充てられています。

主人公のおっこは、「絶対にこんな子いない」ってくらい、最初っからシッカリしています。

成長していく過程でシッカリしていくのではなく、最初っからスゴイ大人なのです。

もちろん、「お客さんが来たら道を開けなきゃいけない」とか、「やたらと大声を出しちゃいけない」とかを徐々にマスターしていく過程は見せてますが、それは成長ではなく、単にテクニックの問題です。

そうではなくって、この子は、基本的に、普通ではありえないくらい、「最初っから大人」と言う設定です。

誰に教えてもらったわけでもないのに、「全部食べてくださってありがとうございます」なんて、普通の小学生に(いや、大人にだって)なかなか言えない様なセリフを、いとも当然のように発っします。

彼女が普通の小学生ではないと伺い知ることができる場面は、オープニングでの悲劇が起こった後、画面が切り替わってすぐのシーンで見ることができます。

マンションの一室、おっこが誰もいない片づけられた室内に向かって「行ってきます」と呟きながらドアを閉めると、おっこは無表情のまま、祖母の旅館「春の屋」までの道のりを一人移動する・・・・この状況描写を見た時、違和感を感じたのは私だけでしょうか。

両親が事故で死んだあと、残された小学生が、一人都会のマンションを後にする・・・これって絶対に小学生ではあり得ない光景です。

両親が亡くなった瞬間から、小学生は何もしませんし、何もできません。
一切の煩わしい対応は周りの大人達が動いてくれます。

小学生は、何が起きたか分からず、ただ茫然と立ち尽くすだけ。
そして、フト現実に戻り我に返った瞬間、悲しさが込み上げ泣きじゃくる・・・そんなことを繰り返すだけが精一杯なのではないでしょうか。

それなのに、おっこは、一人住み慣れた家を後にし、スーツケース一つ携えて、遠い温泉の地にやってくるのです。

このようにこの映画は、冒頭から、周りの大人達が一切おっこに手を貸さない状況を描いていきます。
おっこは、周りから放ったらかしにされた状態で、自分の力だけで成長していくのです。

あの 「憎むべき相手が訪れる」と言う最低最悪の事態においても、おっこは、たった一人で行くべき道を選択し行動します。

いや、それはおっこだけではなく、ライバルの真月(まつき)も同じ状況で、大人として生きていくプレッシャーを常に与えられています。

この、全く大人が介入しないと言う不自然な設定を見ただけでも、この映画が、リアリティを追求した映画ではなく、「子供向けの道徳映画」として割り切っていることが分かります。

ですから、いちいち、こういった点に違和感を感じるのではなく、この映画が本当は何を描こうとしているのかを見ていく必要があります。

リアル目線でおっこの置かれた状況を語ろうとすると、「虐待ではないのか」とか「パワハラではないのか」と言った間違った方向でこの映画を捉えてしまい兼ねないのです。

この映画が子どもたちに伝えたかったこと

この映画は公開後、その出来の良さに予想以上に大人たちが騒ぎ出しました。

「感動した」「号泣です」「今年一番の傑作です」・・・と言った高評価意見が拡大し、大人達が大人の理屈でこの映画を語り始めた気がします。

でも、この映画は、あくまで子ども映画です。

そして、ここまで子ども映画を丁寧に作ると十分大人の鑑賞に堪えられると言うことを実証した映画とも言えます。

では、この映画が、道徳映画として子どもたちに伝えたかったこととは、何なのでしょうか。

子ども映画なのですから、そんなに難しいことを伝えようとしているはずがありません。

あの奈落に落とされる仕打ちをも含め、その全てが、この映画の中で常に語られる、「花の湯温泉は来る人を拒まない」と言う言葉の中に集約されているのです。

カッコよく言うと、「他者への貢献」による「幸福の実現」といったアドラー的な言い方になりますが、もっと分かり易く、道徳の教科書的に言えば・・・

  • 一生懸命働きましょう
  • 人に喜んでもらいましょう
  • 人に対して偏見を持ってはいけません
  • 誰に対しても分け隔てなく接しましょう
  • さすれば自ずと幸せを得ることができるでしょう

・・・っと言った、至極ありきたりの倫理観です。

そして、それは十分に、最高の形で子供たちに伝わっていると思います。

まとめ(おっこと真月に託されたもの)

この映画が、こうして「子ども向け道徳映画」として作られているにも関わらず、ここまで大人達に感動を与えることができたのはなぜでしょうか。

それは一重に、作画、演出、脚本、声優の全てにおいて、子ども向け映画のレベルを遥かに超えたクオリティで提供されたからに他なりません。

この映画の優れた点を一つ一つ語りだしたらキリがありません。
それらについては、数多くのブログやYoutubeのレヴューで語り尽くされていますので、ここで改めて説明するのはやめておきます。

ただ、最後に一つだけ。
「おっこと真月」と言う相対する二人の、この映画における存在意義について、私が強く感じたことをご紹介させていただいて、この感想を締めくくりたいと思います。

先にも書きましたが、おっこは、現実の小学生とは思えないほど出来過ぎの子です。

そして、ライバル役の真月も、鯉のぼりのイベントや庭園のライトアップを大人達に指示するほどのあり得ない小学生として描かれています。

しかし、この現実離れした違和感のある二人を主軸においた設定こそが、この物語におけるキモの部分だと感じるのです。

それは、おっこと真月と言う対照的な二人が、この花の湯温泉と言う地に秘められた「来る人を拒まない」と言う力を具現化した存在として位置づけられているのではないかと言うことです。

徹底的に現実路線で温泉街を盛り上げようとする真月
とにかく「何かをしてあげたい」と言う衝動だけで走り回るおっこ

まったく違う方向性の二人が、最後は協力して神楽を踊るシーンで映画は幕を閉じます。

この素晴らしいラストシーンに着地したのを見たとき、「ああ、この温泉の地を司る山の神々が、この地の永遠の繁栄を願い、二人を巫女として引き寄せたんだなあ」・・・私は、そんな思いを感じずにはいられなかったのです。

そして、この役回りは、且つての峰子にも与えられていたに違いありません。

「来る人を決して拒まない」この地のパワーが延々と脈打ち、次世代へと引き継がれていくのです。

この映画は、「子ども達に道徳的倫理観を伝える」とともに、「現代社会から失われつつある他者への思いを今一度見直してみてほしい」と言う大人たちへのメッセージが込められた、そんな作品の様な気がします。

やっぱ、大人も感動しちゃう、素敵な映画ですね。

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