メチャクチャ危険で、海外でやたらと評価が高いこの作品。
心霊現象や化け物が出てくるわけではないので、ジャンル的には「ホラー映画」とは言えないかもしれませんが、化け物並みに恐ろしいS女による、あのクライマックスは、ホラー以外の何物でもない。
いや、もはやジャンルなんてどうだっていいくらいの劇ヤバ映画。
それがこの「オーディション」なのです。
概要
- 監督:三池崇史
- 脚本:天願大介
- 原作:村上龍
- 製作:福島聡司、陶山明美
- 製作総指揮:横浜豊行
- 出演者:石橋凌、椎名英姫、沢木哲、國村隼、石橋蓮司、松田美由紀、
- 音楽:遠藤浩二
- 撮影:山本英夫
- 編集:島村泰司
- 配給:(日本)アートポート、(アメリカ) Vitagraph Films
- 公開:(カナダ)1999年10月6日、(日本)2000年3月3日、(香港)2001年9月21日、(イギリス)2001年10月17日、(フランス)2002年3月6日
- 上映時間:(日本)115分、(アメリカ)R指定版 113分
あらすじ
妻に先立たれたビデオ会社経営の中年男:青山(石橋凌)は、映画業界の友人(國村隼)に相談して、再婚相手を探すべく映画のオーディションを企画する。
そこで目を付けたのが、怪し気だけど、ちょいとイイ女、麻美(椎名英姫)。
二人の恋愛関係は、付き合い始めこそスコブル順調だが、次第に麻美がとんでもない異常人格者だったことが分かった辺りから事態は急変。
あの、世界の映画祭を震撼させた、あまりにもオゾマしき結末へと突き進んでいく・・・ってお話です。
感想
結婚相手選びは慎重に
それにしても、結婚相手をオーディションなんかで探すとロクなことにはなりません。
しかも、「新車を決める時と同じくらい迷っちゃったよ」なんて不謹慎なセリフを吐く、主人公の青山さんですから、まあ、罰が当っても仕方ないってもんです。
ただ、この青山さん、恋愛に対する姿勢は至って真面目で、麻美さんに対してもトコトン真摯に付き合おうと努力しています。
ですから、最終的にあそこまでヒドイ扱いを受ける道理はないと思うのでが、如何せん、麻美さんの頭ん中が道理を超えちゃってますから、もはや、どうしようもありません。
恐ろしいまでに美しい、女優「椎名英姫」
っで、この麻美さんを演じてるのが「椎名英姫さん」って女優さんなのですが、この方がもう、そら恐ろしいほどに素晴らしいのです。
スレンダー過ぎる身体から、細く足先まで延びる脚線がやけに弱々しく、骨が浮き出るほど細い首筋の上に涼し気な小顔がチョコンと乗っかってる。
幸薄そうな口元から漏れ聞こえる、そのモデル体型から想像できない様な子供っぽい声がアンバランスで、見ている側をどうしようもなく不安にさせる。
過剰な演技で恐がらせるのではなく、スッとそこに立っているだけで、存在そのものがヒタスラ恐い。
私としては、この映画以外では見た事がなかった女優さんですが、よくぞこれほどの適役を見つけたものだと、そのキャスティングの素晴らしさに感心してしまいました。
彼女を探し当てたオーディションは、大正解だったと言えるでしょう。
激痛体感の超クライマックス!
この映画、私などが言うのもオコガマしいのですが、いつもなら、ついつい作品づくりの中で遊び過ぎてしまう三池監督にしては、最後までキッチリとまとめ上げた印象が強い作品です。
クライマックスがあまりにも凄まじいので、どうしてもそこだけが強調して語られてしまうのですが、そこに行き着くまでのプロセスは至って王道です。
「真面目にやれば、ちゃんと撮れるじゃん、三池さん」
な~んて偉そうな感想をつい漏らしてしまいそうなくらいスムーズに進行していきます。
だけどやっぱり、あの身の毛もよだつクライマックスシーンは、見事に「これぞ三池監督」でした。
ワイヤーで・・・足首を・・・キリキリキリ・・・
ああ、思い出しただけでも悍ましい地獄絵図。
海外で上映された時は、ショックで入院した観客が出たほどでした。
オープニング上映会で、映画を見終わった女性が、 会場に来ていた監督に向かって、「この悪魔!」と叫んで出て行ったと言う有名な逸話も残ってるくらいです。
私はDVDで鑑賞しましたが、観ていて、もう「痛い痛い」。
テレビの前で自分の足首を手で押さえながらノタ打ち回って観てました。
三池さんって、いったい・・・
そう言えば、リングからはじまった一連のJホラーブームの際に、「脚本:秋元康」「配給:カドカワ」の鳴り物入りで公開された「着信アリ」の監督が、リングの中田英夫監督でもなく、呪怨の清水崇監督でもなく、この三池監督でした。
当時の私には、三池崇史って、やくざ系Vシネマの人だと思い込んでいたので、なぜ制作サイドがこの監督を抜擢したのか分らなかったのですが、既にその時点でここまでの超ド級ショッキング映画を撮っていた人なら納得できます。
ただ「着信アリ」は、さすがに全国規模で公開のカドカワ映画だつただけに、やりたい放題にはさせてもらえなかったみたいです。
三池監督にしては比較的抑え目の作品だったと思います。
でも、そのあとに撮った「インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~」の残酷シーンも、このオーディションに匹敵するくらい狂ってましたから、やっぱ三池さんの本質は絶対にコッチ系統に間違いありません。
作品を選ばず、数えきれないほどの本数を手掛け、評価の高低差が非常に激しい三池監督ですが、比較的、潤沢な予算の時の方が失敗作が多い気がします。(稀に「十三人の刺客」みたいな傑作もあるから不思議な人なんですけどね)
ただ、やはり、この映画の様に、低予算で野放し状態になったときの作品の方が、より一層、真の三池ワールドを満喫できると強く感じる次第です。
今後も、三池監督の低予算B級映画を追っかけていきたいと思います。
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