1977年、イギリス統治下の香港が手掛けた特撮怪獣映画の大傑作、「北京原人の逆襲」をお届けします。
ガオ~~~!
概要
スタッフ
- 製作:ラミー・ショウ
- プロデューサー:チャイ・ラン
- 監督:ホー・メンホア
- 脚本:ニー・クァン
- 撮影:ツァオ・ホイチー、ウー・チョーホア
- 美術:チェン・チンシェン、ジョンソン・ツァオ
- 編集:チアン・シンロン、チャイ・ラン、村瀬継蔵
- 音楽:チェン・ユンユー(フランキー・チェン)
- スタント指導:ユエン・チョンヤン、村瀬継蔵
- 特技監督:有川貞昌、村瀬継蔵
- 特技助監督:川北紘一
- 北京原人造形・スタント:村瀬継蔵
- 特技撮影:富岡素敬
- 特技照明:森本正邦
- 特殊効果:久米攻
- 特技美術:鈴木儀雄、豊島睦、佐藤保、中村博、鈴木利幸、コスモプロダクション(三上陸男、高橋章)
キャスト
- チェン・チェンフォン:ダニー・リー
- アウェイ:イヴリン・クラフト
- ワン・ツイホア:シャオ・ヤオ
- ルー・ティエン:クー・フェン
- チャン・シーユー:リン・ウェイツー
- アロン:ツイ・シャオキョン
- 歌手:チェン・ピン
あらすじ
ある日、ヒマラヤの奥地で大地震が発生。
その影響で、巨大な北京原人が数万年の眠りから目覚めた。
その噂を聞きつけた興行師は、冒険家のチェンを雇い、ヒマラヤに向かう。
北京原人の捕獲に成功した一行は、原人をムリヤリ香港へと輸送するが、 原人に育てられたと言う謎の金髪美女に絆された冒険家チェンは、原人を助けるべく動き出す。
鎖を引きちぎり、否応なく香港のビル群を破壊してしまう原人を食い止めるべく、人間による容赦のない攻撃が原人に襲い掛かる。
逃げ場を失った北京原人の運命や如何に・・・。
感想
伝説の香港怪獣映画
この作品は、1977年に公開されてから、なかなか媒体化がされず、2006年になってようやくDVD化が実現した作品です。
DVD発売当時、私が購読していたホームシアター関連雑誌「HIVI」や、今は無きDVDマガジンの名誌「DVDぴあ」などで、この映画の事が次の様に紹介されておりました。
- 日本映画界の精鋭が総力を結集した伝説の香港映画!
- DVDで映像特典が見られるのは日本だけ!
思わず触手をそそられる宣伝文句。
この魅惑のコピーにマンマと乗せられ、私がDVDを購入しちゃったのは言うまでもありません。
サービス精神てんこ盛り
もともとこの映画は、同時期(1977)に公開されたハリウッド版「キングコング」のパクリです。
しかし、「どちらの作品がパワフルか?」と聞かれたら、断然コッチに軍配が上がるのは事実です。
確かに70年代の香港映画ですから、若干の作りの粗さはあります。
しかしながら、ことサービス精神に関しては徹底した充実ぶりで、その作りの粗さが反ってスピード感にも繋がり、いい意味で「弾けた作品」となったことは間違いないでしょう。
とにかく展開がやたらと早いです。
細かいストーリー上の矛盾なんてイチイチ気にしていません。
「北京原人がなぜ今までヒマラヤで生きていられたのか?」
・・・そんな細かいこと、もちろん解明されるはずがありません。
「原人なのに、なんであんなにデカイのか?」
・・・映画の中で誰一人疑問を持つ人間はおりません。
とにかく、ものすごい勢いで話しが突き進んでいきます。
主人公一向がジャングルに入るや否や、底なし沼、象の大群、虎の襲撃・・・と、ベタベタの活劇シーンの連続に目を離せません。
流血シーンも尋常ではなく、どうみても絵の具にしか見えない血糊がドバドバ出てきて、画面中真っ赤っかです。
サービスシーンの盛り込み過ぎで、収拾のつかないドンチャン騒ぎが繰り広げられ、観ていてムカムカ・・・じゃなくて、ワクワクしちゃうこと必至です。
そして、サービスシーンの最たるものと言えば、北京原人に育てられたと言う「女ターザン」みたいな金髪ネエチャンでしょう。
とにかく、モノスゴイ色っぽい・・・と言うかエロさ全開です。
- オッパイのトップは、完全に見せちゃってます。
- 主人公とは洞窟ん中でやっちゃいます。
それを覗き見してる原人が憐れです。 - 悪徳興行師にはレイプされそうになっちゃいます。
日本の怪獣映画にはないアダルトな展開は、さすが、香港映画なのです。
魅惑の日本特撮
そして、なんと言っても見逃せないのが、日本の特撮陣が手掛けたと言う特撮シーンのすばらしさです。
とにかく、ミニチュアの緻密さには驚きます。
DVDをジックリと見返してみると、原人が破壊するビルの部屋の中にまでソファや机がキチンと作ってあるのが分かります。
ただ、そこまで精密に作られたミニチュアも、映画全体から漂うなんとも言えない貧乏臭によって、それほどスゴイもんに見えないところが哀しいです。
っつうか、そんな無駄なもん作ってる暇があったら北京原人の顔を何とかしなさい!・・・ってくらい、ギニョールで作られた原人のアップが貧素過ぎて、もはや哀愁すら漂ってます。
娯楽映画の極み
クライマックス。
ビルの屋上から原人が火だるまになって落下していくラストシーンのスペクタクルは、なかなかの出来栄えです。
ところが、「ラスト迫力あるなあ!」・・・と感心してたら、イキナリ映画が終わっちゃったのには驚きます。
アメリカ版のキングコングでは、ビルからの落下後、地面に叩きつけられたコングの心臓の鼓動が徐々に消えていく・・・っと言う悲しいラストを見せてくれました。
でも、コッチは、そんな余韻なんてありません。
「即死なんだからオシマイ!」って言うくらいの潔さで、ズバッと幕を下ろします。
それはそれは、清々しいほどのラストです。
余分なものは一切なし。
ただただ観客が喜ぶだろうと思ったことを、たとえそれが製作側の勝手な勘違いだったとしても、とにかくそれに向かって一直線に突き進んでいく、「エンタテイメント映画の極み」と言って間違いないでしょう。
タランティーノも大絶賛。
未見の方は、是非一度ご覧になってみてください。
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