映画「パラサイト 半地下の家族」【感想】社会の闇をコメディと惨劇で彩った超傑作![ネタバレ有り]

映画

韓国のスピルバーグ:ポン・ジュノ監督が手掛けたアカデミー賞受賞作。

あまりにも深過ぎる社会の闇を、コメディと壮絶なラストでエンターテインメント映画に昇華した傑作。

スポンサーリンク

概要

スタッフ

  • 監督:ポン・ジュノ
  • 脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン
  • エグゼクティブ・プロデューサー:ミキー・リー
  • プロデューサー:クァク・シネ、ムン・ヤングォン、ポン・ジュノ、チャン・ヨンファン
  • 音楽:チョン・ジェイル

キャスト

キム家

  • キム・ギテク(父):ソン・ガンホ
  • キム・ギウ(息子):チェ・ウシク
  • キム・ギジョン(娘):パク・ソダム
  • チェンスク:チェン(ギテクの妻)・ヘジン

パク家

  • パク・ドンイク(父):イ・ソンギュン
  • ヨンギョ(パクの妻):チョ・ヨジョン
  • パク・ダヘ(娘):チョン・ジソ
  • パク・ダソン(息子):チョン・ヒョンジュン
  • ムングァン(家政婦):イ・ジョンウン
  • オ・グンセ(ムングァンの夫):パク・ミョンフン

あらすじ

半地下のアパートに住むキム一家は全員失業中。
友人のコネで、高台に住むパク家の家庭教師に潜り込んだ長男だが、その後、妹、父親、母親が、それぞれ家庭教師、運転手、家政婦になりすまし、次々とパク家に入り込むことに成功。
ある日、パク家が留守の間に居間で宴会をしていたキム家だったが、その時突然インターホンが鳴る。
玄関のカメラに写っていたのはキム一家が卑劣な手段で追い出した家政婦だったのだが、彼女を招き入れたことで事態は急変。
物語は雪崩のごとく悲劇へと向かって突き進んでいくのだった。

感想

深い闇を描いたコメディ

まずはじめに言っておきますが、この映画はコメディです。

ラストの展開があまりにも強烈で、画面全体も暗く湿った雰囲気を漂わせていますので、うっかりすると忘れてしまいそうですが、この映画はコメディなのです。

どうしても、アカデミー賞4部門を取った作品として見てしまいますから、それなりの風格や品位を期待してしまいがちです。
しかし、そのような見方で臨みますと、あまりの非現実的なストーリー展開に面食らってしまうでしょう。

まるで吉本新喜劇かと思うくらいにデフォルメされた世界が展開し、困惑してしまう可能性が高いです。
ですから心してかかりましょう。
「これはコメディ映画なんだ!」・・・と自分に言い聞かせながら観る姿勢が大切です。

キム一家 寄生のプロフェッショナル 集団

まずは映画がはじまった瞬間から、主人公:キム一家のレベルの高さに不自然さを感じます。

劣悪な環境の中で暮らしているにしては知的レベルが高く、また、異様なモチベーションを合わせ持っています。
計画性にも優れ、その場その場を切り抜ける明晰さも持った家族です。

「ここまで優秀なら、ちゃんと仕事しろよ」と言いたくなること必至で、たぶんキム一家は、元来の寄生集団なのではないでしょうか。

映画の冒頭でも、妻が夫に向かって「次の計画は?」とほくそ笑みながら尋ねているシーンがありますが、ここからも、やはりキム一家は、父親を中心としたパラサイト集団であり、これまでにもこうして寄生を繰り返しながら生活を続けてきたことが伺えるのです。

兄妹が家庭教師として入り込んだ段階でストップしておけば、誰にも迷惑をかけずに一定の収入を得ることができたはずです。
しかしキム一家は、それだけでは満足できず、卑劣な手段を使い、それまで真面目に勤めていたパク家の運転手と家政婦を追い出してしまいます。

家族全員が失職しているのですから、ある程度生活が見通せる金銭さえ手に入ればそれでいいはず。
それなのに、やはりキム一家には根っからの寄生気質があり、宿主を食いつぶすまで増殖を続けてしまう、やっかいな習性を持っている集団としか考えられないのです。

更に、あそこまで頭のいい家族が、なんの警戒もせずに、留守のパク家の居間で宴会を開いたことも不自然です。
しかも、突然訪れた元家政婦を家に招き入れるなど、到底考えられません。

つまり、この「やり過ぎの展開」こそがコメディ映画であって、コメディなら不自然さを感じません。

半地下の意味するもの

なにより、この映画で描かれる「半地下」と言う空間を見た瞬間、言葉を失いました。
恥ずかしながら、私はその存在をこの映画によって初めて知りましたが、これは作り話などではなく、現在もなおソウルの街に現実に存在する居住空間です。

1970年代、南北朝鮮の対立が激化。
国家政策により防空壕として地下室の設置が義務付けられ、その後80年代に入ると、国は住宅不足解消のため、この地下室を住居として合法化します。

物価の高騰によりソウルに住む低所得者層は、今なお比較的安価なこの半地下に住むしか道がない。

住戸は下水管よりも低い位置にあり、逆流を防ぐためトイレが天井付近に設置されている光景には驚きました。

部屋は絶えず薄暗く、夏は蒸し暑く、劣悪な環境の中で暮らす人々が、今も数多く存在するという韓国の現実。

ジュノ監督は、勇気をもって自国の実体を世界に曝け出したのです。

パク家 あまりにも無防備な家族

キム一家の対極として、高台の高級住宅街に建つ、近代的で文化的な家屋に暮らす家族:パク家もまた、この映画はデフォルメしていきます。

社会の成功者であるパク家ですが、あまりにも能天気で無防備な家族で、いとも簡単にキム家の餌食となっていきます。

IT企業の代表である夫は上昇志向が強いですが少し浮世離れした優男(玉ねぎ男がモデル?)です。
悪人ではありませんが、地下の臭いに過敏に反応し、その行動がクライマックスの悲劇へと繋がっていきます。

専業主婦の美しい妻は、騙され易くお人好しで、英語を交えながら話すという滑稽な存在として描かれます。

パク家には子供が二人おり、パク夫婦は当然子供達にも上層教育を施し、より洗練された人格を培っていきたいと願ってはいますが、なかなか親の思う様にいかないのが世の連れ。
映画は、その辺りの世代間ギャップもうまく描いています。

年頃の可憐な娘は、お嬢様としての生活に飽き飽きし、パラサイトとして侵入してきたキム家の兄に思いを寄せてしまいます。

幼い弟は、周囲を見渡すことのできない性格を親の前で演じているという、やっかいな子どもですが、家庭を壊すほどの強烈な存在ではなく、ラストに向けてのドタバタのキッカケとして置かれているように感じます。

高低差を使った演出の妙

ジュノ監督は、このキム家とパク家の貧富の差を、凄まじいまでの高低差で描いていきます。

映画の途中、キム家の父と兄妹がパク家から逃げ出し、自分の住み家へと戻っていくシーンがありますが、どこまでも下っていく坂や階段は、まるで地獄へと落ちていくかの如き落下感があり、背筋の凍る思いに襲われます。

更にパク家の建物内にも隠された地下室があり、 そこに長年暮らす住人がいると言う驚きの展開が待っています。
頂点だと思われたパク邸にあって、まさかこれほど間近に「地下」という高低差が存在していたのです。

そして、その住人は「ここから出たくない」と呟きます。
長年、豪邸の地下でヒッソリと暮らし、主人が留守の間に這い出ては食料を漁って生きてきた彼は、もはや表社会で生きることを放棄し、日の当たらない場所で暮らすことを望んだのです。

人間はとことん貶められると這い上がる気力さえ失ってしまう。
その方が楽になる。
これこそが、文明社会が内包する格差や貧困がもたらした恐ろしい現実なのではないでしょうか。

そして映画は、血みどろのクライマックスへと雪崩を打って突き進んでいきます。

最後まで徹底的に面白く、観客を全く飽きさせずに上映時間の2時間13分がアッと言う間に過ぎ去ります。
そして、見終えたあとは、なにか胸を掻きむしられる様な余韻を感じ、もう一度見てみたくなる。

絶対お薦めの、ジュノ監督快心の一撃です。

第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

コメント

タイトルとURLをコピーしました