映画「マタンゴ」【感想】特撮センスの良さを感じる日本製SFホラーの秀作!〔若干ネタバレあり〕

映画

スポンサーリンク

概要

スタッフ

  • 監督:本多猪四郎
  • 特技監督:円谷英二
  • 製作:田中友幸
  • 原案:星新一、福島正実
  • 脚本:木村武
  • 撮影:小泉一
  • 美術:育野重一
  • 録音:矢野口文雄
  • 照明:小島正七
  • 音楽:別宮貞雄
  • 編集:兼子玲子

キャスト

  • 村井研二(城東大学心理学研究室の助教授):久保明
  • 関口麻美(歌手。笠井の愛人):水野久美
  • 作田直之(笠井産業の社員):小泉博
  • 小山仙造(臨時雇いの漁師):佐原健二
  • 吉田悦郎(新進の推理作家):太刀川寛
  • 笠井雅文(青年実業家。笠井産業の社長):土屋嘉男
  • 相馬明子(村井の教え子で婚約者):八代美紀
  • マタンゴ:天本英世、中島春雄

あらすじ

東京のとある病室。入院中の青年が恐怖の体験を語った。

話によれば、ヨットで海に繰り出した7人の若い男女が嵐により難破し、不気味なキノコが密集する無人島に漂着したと言う。

当初、海岸に横たわる朽ちた難破船を拠点に、なんとか協力する7人だったが、次第に食料を奪い合う見難い人間関係へと崩れていった。

極限状態となった7人は、その背後に得たいの知れない生き物がうごめく気配を感じつつも、「食べてはいけない」と書き残された日記のメッセージを忘れ、「キノコ」に手を伸ばし始めるのであった。

感想

贅沢な特撮演出

とにかく始まった瞬間から、特撮のクオリティが高いことに驚かされる映画です。

特にミニチュアワークの素晴らしさが際立っていて、「金かけてんなー」って思わず声が出ちゃうほどいい出来です。

まずは、映画の導入部分で、「窓越しから見える東京の夜景」に引き込まれます。
ミニチュアだと分かるのですが、それが反ってエキゾチックさを増幅させていて、この夜景を見た瞬間、一気に異空間へと連れ去られてしまうのです。

ヨットの全景シーンに使われているミニチュアも見事です。
こちらは、ミニチュアとは思えないくらい精巧に作られていて、しかも重量感が半端なく、あれだけの本物感を出すためには相当スケールの大きなミニチュアだと推察できます。
そのヨットに、アナログで表現された荒れ狂う波が襲い掛かるシーンは、CGなんておよびじゃないくらいのリアルな質感で迫ってきます。

主人公達がたどり着いた無人島の難破船セットがこれまた素晴らしく、当時の美術スタッフのレベルの高さが伺えます。
荒唐無稽な世界にあっても、職人さんがトコトン拘って作り込んだセットは見ごたえ十分です。

とにかく、映画全般にわたり、実景を使っても何ら問題のないシーンにまで、わざわざミニチュアや合成を使って表現しているところに、この作品のセンスの良さを感じるのです。

日本初オプチカル・プリンターの導入

この映画の合成技術については、日本に初めて導入されたと言う「オプチカル・プリンター」なる新兵器を使用した、日本映画の合成撮影においてエポックメイキングな作品と言えます。

映画は、今も昔も「合成」と言う技術を使って、現実では見られない世界を観客に提供することが可能な芸術です。

この合成技術は、いまではデジタル処理で簡単にやれるようになりましたが、その昔は、光学合成と言う、複数のフィルムを光学的に重ね合わせる手法を使いアナログ処理をしていました。

オプチカル・プリンターは、この光学合成を、より美しく、より簡単に行うために発明された機材です。

歴史的には、1920年代初頭に開発されたもので、日本で初めて使用されたのが、1963年、円谷英二監督が、この「マタンゴ」を撮影するためにアメリカのオックスベリー社製のオプチカル・プリンターを購入したのが初めてだと言うことです。

その後、円谷の特撮作品で活躍してきたこのオプチカル・プリンターも、1980年代から徐々にデジタル処理へと移行し、1990年代には完全に使われなくなります。

1963年の当時、円谷監督は、 このオプチカル・プリンターを使ったマタンゴの合成演出により、日本人がそれまで見たこともない、今見ても違和感を感じない高レベルの合成世界を魅せてくれたのです。

濃いいキャラクター達

特撮技術ばかりでなく、この映画が、今なおカルト的な人気を誇る要因として、ストーリーの面白さが挙げられます。

とにかく出てくる連中が濃い連中ばかりで、そのキャラクター同士の絡み合いが映画を最後まで飽きさせない牽引力となっています。

では、極限状態の無人島で蠢く主要キャラ7人をご紹介していきましょう。

まずは、無人島に難破することとなるヨットのオーナー:笠井(土屋嘉男さん)。
こいつが優柔不断な男で、一人では何にも決めれないアホボンです。

次に、作家の吉田(太刀川寛さん)。
粋がってはいますが小心者。真っ先に毒キノコを食っちゃうダメな奴です。

クラブ歌手の麻美(水野久美さん)は、とことん打算的にしか行動できない性悪女です。
キノコを食べた後の水野久美様の妖艶さがたまりません。

操舵助手の小山(佐原健二さん)は、粗野で意地汚い欲望の塊みたいな野郎です。
佐原さんは、この映画のためにわざわざ前歯を抜いたとのことで、デニーロ並みの役者魂です。

スキッパーの作田(小泉博さん)は、一見実直そうに見えますが、一人だけで逃げようとするタチの悪いタイプです。
真面目そうな小泉さんが演じてるから、よりリアルです。

何とかまともそうに見えるのは、大学助教授の村井(久保明さん)と、その恋人の明子(八代美紀さん)の二人だけです。

・・・っと、そんな個性豊かな面々が、食料のない無人島に閉じ込められちゃったからさあ大変。
物語は、何とか自分だけが助かろうと欲望丸出しの人間模様へとエスカレートしていくのです。

そして、そんな醜い人間どもの争いをあざ笑うかの様に、キノコの化け物「マタンゴ」登場。
演じるは、怪優「天本英世さん」。

あまりにもメイキュアップがスゴ過ぎて、ぜんぜん天本英世さんと分からないのが悲しいですが、メイクの不気味さは、当時としては最高の出来だと思います。

まとめ

この映画は、タイトルを見ただけでは、単に放射能で変異したキノコの怪物に襲われるキワモノ映画と思われがちです。

しかし、この映画の本質は、ホラーと言うよりも、むしろ「人間恐い系ドラマ」。
追い詰められた人間達の醜い本性を描き出すことに主眼をおいた映画だと言えるでしょう。

「モンスターよりも人間の方が恐い」・・・こういった展開は、いまでもホラー映画などでよく用いられる常套手段です。

原作モノの映画化ですから、「人間恐い」的な展開も、もともと原作がそうだったのかもしれませんが、それが油の乗った当時の円谷特撮とうまく化学反応を起こしています。

映画から漂う空気感と作品のテーマが絶妙のバランスで融合し、えも言われぬ独特の世界観を作り上げることに成功したと言えるのです。

確かに、昨今の恐怖表現に見慣れた観客からすれば、この映画の「恐怖度」は大したことはないかもしれません。

メイクや恐怖演出の方法など、時代の限界を感じざるを得ませんが、当時としては、かなり頑張っている方だと思います。
天本さんが演じる、マタンゴに成りかけ状態のキモさは、今見ても、夢に出てくる様な恐さがあります。

惜しかったのは、ラストに出てくる「完全キノコ状態のマタンゴ」が全然恐くないこと。
なんかデカい頭が呑気そうにユラユラ揺れてて、「できるかな」の「ゴン太君」みたいだったのが残念でなりませんでした。

(例えが古すぎて分からないと思いますので画像貼っときます。)

マタンゴ 予告編

コメント

タイトルとURLをコピーしました